名古屋教会幼稚園の南隣にP社に15階建の中高層マンションが計画されました。それから5年、すでに建ってしまいましたが、わたしたちは建築差し止めの訴訟を起こしました。いよいよ3月30日に判決が出ます。裁判までの経緯を以下に記しました。
<名古屋教会幼稚園・これまでの経緯>
★2016 年 3 月
ある日突然、S 社が幼稚園南隣地の土地活用(未購入)計画として、14 階建マンション計画を持ってきました。しかし、保護者一同の反対運動のおかげで、5 月 GW 明けには計画は白紙撤回となったのです
★2016 年 5 月始め
名古屋市建築指導課へ、第 1 回市長宛に「幼稚園の保育環境悪化に関する」陳情書を提出しました。 同日午後、S 社の建築計画は白紙撤回されました。
★2016 年 5 月末
S 社の計画中止を喜んだのもつかの間、わずか 2 週間後には、
幼稚園が道一本も隔てない真北にあると知っていながら、南隣地を購入したP社 と私たちの長い闘いが始まりました!
★2016 年 6 月
南隣地にどんな計画があるのか不安だった私たちは、P社が土地をどのように活用しようとしているのかを問う文書を提出しました。そして、担当者に面談を申し入れました。
担当者と面談をしたとき、「まだ土地の計画は精査中だ。ただ、今建っている古いビルは安全・防犯上 夏にでも解体したい」との答えでした。そして、「数多くのマンション建築をしてきたが、幼稚園や保育園な どの教育施設が隣にあっても、特別に配慮したことはない」と言い放たれたので、とても驚きました!
★2016 年 7 月
第 2 回市長宛に「子どもの育つ環境を守るためにマンション建設反対を求める」陳情書を提出 (名古屋市建築指導課へ持参する)
解体による悪影響を心配した私たちは、面談後すぐに解体計画中止を求める文書を送りました。 しかし、夏休みが終わる 8 月の終わりに、解体計画説明会が行われ、そこで突然「9 月 7 日から解体工 事をする」と告げられたのです。
解体工事に関する協議を、3度行いました(1度は計画を説明しただけです)。そして、なんとプレサンス社 員は最初の計画説明会に参加したのみで、後の 2 回は代理人という名の委託会社の人しか来ませんで した。
私たちは、アスベストをはじめ、いろんな浮遊物、騒音、振動などを懸念して、何度も具体的な数字を求め たり、中止を訴えましたが、聞き入れられませんでした。
解体工事をすることについては、本来協議をする必要もないし、強行できるのだと言われました。
★2016 年 10 月
南隣地にあった既存の古ビルの解体を結局強行したので、子どもたちの安全・健康のため 1 ヶ月半もの 間、別の場所での保育を強いられました。
・この時、隣地での解体によって、幼稚園が 1 か月半も他の場所に引っ越して保育を行うなど、聞いたこ とがない大きな出来事だと私たちは思いました。そこで、そんなひどい環境に置かれているという事を、名 古屋市議の方達にもわかってほしくて、議員さんたちに「子ども達を守って!」と葉書を出しましたが、反応 はほとんどありませんでした。
・2 週間程度の限られた期間で、幼稚園職員、そして保護者のネットワークで、思いつく限りの代替地を 探し、最初に快く場所を提供してくださる提案をして下さった場所は、繁華街に近いというような理由で、 愛知県私学振興室で認められなかった時、この人たちは目の前で幼い子どもたちが困っているのに、手 を差し伸べるわけでもなく、ただ文句をいうだけなのか!と、とても情けなく憤りを覚えました。
・しかし、その後名駅近くの永信保育園で、今は使っていない保育室で保育を始められたこと。そして、貸 して下さった永信保育園の方々の温かい配慮などが、とても嬉しかったです ✧*。٩(ˊᗜˋ*)و 。*✧
★2016 年 12 月
11 月末に解体が終了し、やっと大好きな自分たちの幼稚園に戻ってきました。その子どもたちを待ってい たのは、P社からの 15 階建マンションの計画書だったのです!!
・子どもたちと保護者が一緒に、プレサンスの入ったビルの側で、クリスマスのキャロルを歌う計画をしま した(卒園生の親子も駆けつけてくれて、総勢 35 名で歌いました)。
そして、歌った後に、P名古屋支社を訪問し、子どもたちが受付で「おひさまをとらないでくださ い!」と伝え、親子で書いたメッセージを渡しました。
キャロリングが終わって幼稚園に戻ったら、南隣地に建築予定看板が立っていて、とても落胆しました。
・プレサンスが持ってきたマンション計画書に対する私たちの思い(マンション建築が子どもたちに及ぼす 影響、名古屋教会幼稚園の存続の危機について)を文書で送りました。
それに対する回答は通り一遍の内容で、創立 68 年を迎える幼稚園がここ(商業地)に建っている事が悪 いのだというような内容でした。
★2017 年 2 月
河村市長が私的に幼稚園を訪問・視察
幼稚園の西側も南側も視察し、「条例はまだできていないのか。早く作らなくては。」と発言され、同じよう な問題を抱えていたけれど、最終的に名古屋市が介入し解決した養護学校の話を興味深く聞いておられ ていました。
★2017 年 3 月 7 日
子どもの未来を考え、「なごや子ども条例」を管轄する青少年局こども未来課へ、年長組の子ども達が 「教育施設の周りに日照を遮り、生活環境を悪化させるような建物を建ててはならないという条例を作っ てほしい」との要望書と、子どもたちやお母さんたちが書いたメッセージを提出。建築指導課、市長秘書室 へ要望書とメッセージを提出
建築指導課、市長秘書室へも同様の要望書とメッセージを提出
しかし、返ってきた回答書は、まず青少年局こども未来課と建築指導課の連名でした。そして、「名古屋市 は“なごや子ども条例”を制定しているが、これは子どもの健やかな育ちを社会全体で支援するまちの実 現を目指すことを目的としたもので、個別具体的な権利の調整を図ることを目的としたものではない。建 築物に関する制限は、建築基準法等に準じる」というような残念な内容でした。
★2017 年 3 月 15 日
名古屋市庁舎前で、アピール行動
建築指導部・建築審査課へ、軽々に建築許可をださないようにと上申書を提出しました。
★2017 年 3 月 22 日
プレサンスのマンション建設説明会が開かれました。
保護者のマンション建設に対する不安や質問がたくさん出ました。
名古屋市には、画期的な「名古屋中高層建築物の建築に係る紛争の予防及び調整等に関する条例」が あります。そこには、ある程度の高さの建物を建てるためには近隣との協議(話合い)を持たなくてはなら ないとあるのです。
15 階建マンションは、明らかに協議をしなくてはならない対象です。近隣が納得できるような話合いをし なくてはならないという事です。
しかし、建設に携わる立田設計社長は、マンション建設内容や変更に関することでなく、まず計画通りに 建設することには変わりない。それを前提として、工事の時にどのような配慮をするのかというようなこと が協議だと言い放ちました。
★2017 年 3 月 30 日
P社のマンション建設計画に関する協議①を開きました。
在園・卒園を含め、保護者等 30 名が出席して、子どもを思う熱い気持ちで、工事による粉塵、振動、安 全に対する質問などが次々と出ました。
しかし、プレサンス社員は解体の時の協議と同じく、代理人に全てを任せて出席さえしませんでした。 代理人は「今日は確認申請を出しに行きます!」と最後に言って終わりました。
協議が終わってすぐ、有志のお母さんたちが建築指導課へ行き、協議はまだ終わっておらず、協議を続けていくつもりがあるので、協議報告書を安易に受理しないでほしいと伝えました。
★2017 年 5 月 10 日
P社のマンション建設計画に関する協議②を開きました。
私たちの再三の要求にやっと応えて、初めて決定権を持つP社の役員が参加しました。 協議①で質問した、風害、圧迫感、地震等災害時の対策などに対する答えはなく、話し合いは平行線で あるという事から、確認申請の手続きを進めると言い残して帰っていきました。
その後、いつものように建築指導課へ行き、協議はまだ終わっておらず、協議を続けていくつもりがあると いう事を伝えに行きました。そして、協議報告書を安易に受理しないでほしいと再度伝えたのです。
★2017 年 5 月 12 日
しかし、建築指導課担当が協議報告書を受理した(=建築を許可)拒む理由はないからと・・。 協議報告書を受け取る明らかな基準もなく、ただ担当者の判断で受理してしまっていたのです。 そして、それは私たちに報告もされなかったのです。
何度も何度も、協議を続けていく。安易に受理しないでください。と伝え続けてきたのに・・・。
★2017 年 5 月 15 日
青少年局こども未来課と建築指導課に 3 月に提出した「教育施設の環境を守る条例を作ってほしい」とい う要望書に対して、「個別具体的な権利の調整を図ることが目的ではない」とか、「建築物に関しては建築 基準法に準ずる」というような残念な回答書が返ってきたことに納得がいかないお母さんたちでした。 そこで、担当課と直接顔を見合わせて思いを伝えたいと話し合いの場を設けてくれるように要請しました。
そして、なぜ双方の合意なく説明状況報告書を受理したのか?
建築基準法では違法ではないかもしれないが、それでは図れない、子どもたちの健康が脅かされることを 心配しているのに、名古屋市は子どもを守るために工事を止めることはできないのか? などのお母さんたちの心配や不満の声が、その話し合いでたくさん出ました。
そして課を超えて話し合いや解決の道がみつからないなら、是非河村市長に会って私たちの声をきちん と聴いてほしいと伝えました。
けれど、結局は河村市長とは会う時間を設けてもらえませんでした。
★2017 年 7 月
名古屋市中高層建築物条例による協議は、結局わずか 2 回で打ち切られ、マンション建設が強行されました。
★2018 年 3 月 13 日
名古屋地方裁判所へ 15 階建マンション建築差し止めの仮処分申請を出しました。 申立に対する審尋は、5/14, 6/11, 6/29 の 3 回行われて、裁判官は申立人のお母さんたちや職員の気 持ちに耳を傾けてくれました。
なので、少しは期待もして、9 月に仮処分申請の結果が出ました。
でも結局は「子どもの育つ環境は大切だ」と述べながらも、私たちが心配する風害も、圧迫感も、日照も 社会的受忍限度を超えないというような結果でしかありませんでした。社会的受忍限度って何でしょう か?社会的って何を基準にいうのでしょうか?
★2018 年 7 月 24 日
本訴を提起しました!
第 1 回 口頭弁論 2018.10.15
園長先生が、15 分程度の意見陳述をしました。
48 席あると言われていた傍聴席は満席となり、当事者席という関係者席もいっぱいになっていました。 園長先生の意見陳述が始まり、幼稚園や子どもたちの、これまでの苦難。そして子どもたちを思う熱い言 葉の数々に、いろんなところからすすり泣きが聞こえてきました。
お母さんたちの熱い思いも加わって、気持ちがひとつになった素晴らしい意見陳述でした。
<裁判その後の日程>
第 2 回口頭弁論 2018.12.20
★2018 年 12 月末
幼稚園南側にP社の15 階建てマンションが完成...
幼稚園の子ども達の園庭のおひさまは奪われてしまいました。
高いマンションのふもとで、特に冬場の強い風で外遊びができない日もあります。 これが、いわゆる受忍限度の範囲なのでしょうか?
第 3 回口頭弁論 2019.02.28 (子どもたちの権利について)
第 4 回口頭弁論 2019.04.25 (受忍限度について)
第 5 回口頭弁論 2019.07.25 (圧迫感について)
第 6 回口頭弁論 2019.10.17 (ビル風について)
第 7 回口頭弁論 2019.12.19 (風害について/風工学研究所 中村修氏の意見書)
第 8 回口頭弁論 2020.02.06 (日照環境/愛知工業大学 准教授 細渕勇人氏の意見書)
第 9 回口頭弁論 2020.07.30 (環境建設家・東京工業大名誉教授 仙田満氏の意見書)
第 10 回口頭弁論 2020.11.09 (尋問手続き/早稲田大学名誉教授 増田均氏の意見陳述)
(原告保護者2名、幼稚園教諭、園長、牧師、被告側の証人尋問)
第 11 回口頭弁論 2021.01.06 (最終陳述・結審)
第 12 回口頭弁論 2021.03.30 11 時 30 分~ 判決言渡し!