2022年7月28日
内閣総理大臣 岸田文雄 殿
安倍晋三元首相の「国葬」決定の撤回を要請します
名古屋キリスト教協議会は、名古屋市に拠点を持つ教派を超えたプロテスタント教会及び関係諸団体が連帯し、主イエス・キリストにある証しと社会的責任を果たすために事業を進めている団体です。私どもは、安倍晋三元首相が、志半ばに不慮の死を遂げられたことに哀悼の意を表します。しかしながら、政府が「国葬」を決定したことは拙速と考えざるを得ません。以下の理由で撤回することを要請いたします。
1.明治憲法下の「国葬令」は、法の下の平等、政教分離などの観点から1947年に失効されており、法的根拠が存在しません。岸田内閣は、内閣府設置法を根拠とし、閣議決定での国葬を可能としましたが、全額国費で営まれる国葬の実施は行政権に属するものではありません。国会での十分な議論なしに行われることは、立憲主義に違反すると考えます。
1.岸田首相は、安倍元首相の首相在任期間が戦後最長であること、震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交展開を評価していますが、その評価は絶対的なものではありません。安全保障関連法等の強硬採決は国論を二分しましたし、森友・加計問題など政治と金を巡る疑惑は曖昧にされたままです。そのような批判的評価を無視して国葬を決定したことは、岸田内閣の恣意的判断と言わざるを得ません。
1.今回の銃撃事件後、安倍元首相が世界平和統一家庭連合(旧名称・世界基督教統一神霊協会)との密接な関係を築いてきたことが明らかになりました。全国霊感商法対策弁護士連絡会では、安倍元首相が旧統一教会と関りを持つことに対して警鐘を鳴らしていました。旧統一協会は破壊的カルト集団であり、霊感商法や正体を隠した違法献金など、反社会的実態は依然として続いています。キリスト教会では、カルト問題キリスト教連絡会を通して、被害に遭われた方との相談に応じてきました。政治とカルト集団との癒着問題が徹底究明されねばならないときに、安倍元首相の国葬が行われることは断じて許されません。
1.国葬を行えば、国民の弔意が国家によって強いられることになります。また、死者が神格化されることになり、自ずと思想・良心の自由を侵害します。はたして安倍元首相の死をもっとも嘆き悲しんでいるご遺族は、国葬を望んでいるのでしょうか。個人を偲ぶ弔いの儀式を、国葬という形で政治利用されることがあってはなりません。
以上
名古屋キリスト教協議会議長
鈴木直哉
役員一同